一目惚れ
ある日、公的機関の技術者U氏がストーリオ株式会社を訪れ、様々な形に曲がった無垢材の加工片を見せてくれました。
ストーリオの代表、木村は一目見て「これを製品化したら面白いものが出来る」と直感しました。
なぜなら、従来の曲げ木製品は「成型合板」がスタンダードで、厚みと柔軟性に限界がありましたが、その日見た加工片は、貼り合わせしていない1枚の無垢材を曲げたもので、カット面も美しく、薄さと強度、バネ性を持つ材質だったのです。
そして、この材質を使って何か魅力的なものができないかと考え始めました。
いざ試作
手始めに自分たちが職場で使いたいと思うデスクトップアイテムの試作に掛かりました。
ですが一口に曲げるといっても簡単には行きません。割れたり、時間が経つとヒビが入る、変形するなどの問題がありました。U氏と私たちは、問題をひとつひとつ潰し、加工を試しながら、できること、できないこと、改良点を探っていきました。
試作をもってコンペへ
試作は無事に完成に漕ぎ着け、2011年ニイガタIDS(イデス)デザインコンペティションへ出品しました。
受賞はならなかったものの、審査員の方々からは評価と期待のお声をいただき、私たちはますます燃えました。
「どうせやるなら、この素材でしかできない世界一の製品を作ろう。」「オリジナリティのあるものを作ろう。」と。
ですが、熱意とはうらはらに、いちからデザインし、製品化していく手法も手順も確立しておらず、どのように進めるべきか探っていたところ...
「百年物語」との出会い
所属しているNICOクラブの紹介で「にいがた百年物語」というプロジェクトに出会いました。
「にいがた百年物語」は、県内のプロジェクト参加企業の製品を開発から監修し、単品でなく良質なブランド群として国内外に発信する新潟発の国際ブランド。
プロのデザイナーと、にいがた産業創造機構の優れたアドバイザーの方々からアドバイスを受けることができる良いチャンスです。
早速、2013年の開発テーマ「男を磨く美しさと力強さ」に沿った曲げ木製品の企画に応募し、参加が決まりました。
紆余曲折のアイテム選び
最初のミーティングでは、応募の際に提出したライト等数アイテムの企画が検討されましたが、材質×加工の特質を直感させるアイテムとしては決定的ではなく、他の企画を検討することになりました。らせん形状を生かしたアイテム、常にそばにあり、手に取るような小物、スツールなど。開発スタッフは、数十パターンのスツールのデザイン画を描きましたが、検討の末、製品化には時間がかかるとの結論でした。
そして、スケジュール上はデザインチェックが進んでいるはずの8月のミーティングで、ようやく「メガネケース」に決定しました。
オリジナリティのある製品を!と思っていた私たちには、最初メガネケースはありふれたもののように思われ、正直、戸惑いを憶えました。ですが、愛着を込めて使用してもらえる、百年物語のコンセプトにマッチしたアイテムであることは間違いなく、残り少ないスケジュール内に製品化することも可能と思えました。そして、徐々に「メガネの付録でない、欲してもらい、選んで買ってもらえるメガネケースをつくる」という実はすごく高いハードルを超えてみたいと思うようになりました。
試行錯誤の日々、失敗と発見
デザイン画を描き、厚紙で模型を造り、アドバイスを受けながら形状や仕様を決め、試作に入りました。
設計通りに曲げる加工は試行錯誤の連続でした。ある日のちょっとした加工の失敗から逆に、さらに機能的な形状を発見し、目からウロコが落ちるようなこともありました。
そのような幸運なアクシデントにも恵まれ、時間はかかりましたが着実に加工技術を確立して行きました。
また、メガネケースの製作に平行して、独自に曲げ木の専用加工機の設計・開発も行いました。
メガネケース完成
こうして、スライド型とトレイ型ふたつのメガネケースがようやく完成しました。
一見、何の変哲もないメガネケースですが、木目とシンプルなデザインの美しさ、新しい木の可能性を十分に表現できたと思っています。
そして、メガネケースとともに、県の工業技術総合研究所とストーリオが共同で開発した、まだどこにもない「世界初」の加工技術が誕生したのです。
これから
私たちは、この材質と最新の加工技術に AvanWood アバンウッド という名前を付けました。
avant-garde(アバンギャルド、前衛的な)とwood(木材)の造語です。
私たちは、まだ開発途上の技術をさらに進化させ、ストーリオ製品を通じ、皆様に斬新で刺激的、それでいて優美で上質なウッドデザインを提案していきたいと考えています。
どうぞ皆様、ストーリオ製品をお手にとって、美しさ、新しさを体感してください。そして次の商品展開にもご期待ください。